内容
本書は究極の美における真理探究である。より詳細に説明すれば、本体一元論(実体一元論)の立場から本体(実体)である第一表現者の「美自体(美そのもの)」への参与を試みる哲学論考である。まずは「快適性・健全性」を美として定義し、「美放」や「適美」などの概念を用いて感覚(視覚)の美、次には知性の美の考察に移行し、そのうえ想像の美や醜(美における醜)などの問題を解決した後、世界の有終(可滅、必滅)の展開の美を経て、世界の無終(不朽、不滅)の展開の美における知解から「世界価値の美」が規定され、そして「汎美」の概念を通じて世界に無限の美を絶えず分有させている唯一究極の美である美自体の理解を深めていくことが本書の主な流れとなる。なお本書の特色は、人間の最高認識とされる真知・直観を有する観照を通じて、(「全ては美である」という統観なる)汎美を越えて本体による世界化された観念(世界観念)としての美自体との本質一致を重要な鍵としたことである。したがって本書は芸術論に主眼を置くのではなく、その主題はあくまで世界本体としての究極原因(永遠原因)における美の解明にある。
編集者から一言
究極の美へと迫る哲学論考。本書では〈本体一元論〉の理解を通して、人間の最高精神の活動によって把握される永遠原因における美の本質を明らかにしていく。最初に独自の美の定義から出発し、それから感覚(視覚)による美ならびに知性による美などが考察される。人間知性によって理解された美において、世界の一回性なる生成消滅(誕生と消滅)の展開の美から世界の悠久性・恒常性の展開の美、さらに世界の一部としての人間の内なる普遍美などの討究を経て、最後には人間における最高段階の認識すなわち観照なる真知直覚によって世界化された本体の観念の美(美自体)との本質一致を試みる。それゆえに、本書は「全ての美は一なる美を起源とする」ことの解明に挑む稀有な真理探求者に向けられた知的挑戦の書である。
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